記憶を研ぐ

世界中の自粛モードも随分長くなってきましたが
みなさんはいかがお過ごしでしょうか

私の方は教室開始の延期により
思いがけない時間の贈り物があったので
予定のなかったアトリエの整備等をしはじめて
先日は彫金机たちのメンテナンスを行いました

うちの机たちは、はるばるヨーロッパからやってきて
フランスの某有名メゾンの日本工房で働いたのち
縁あってうちのアトリエにいらっしゃいました^^

ちょっとやそっとの打撃ではうんともすんといわない
大きな机たちで、面の皮もそうとう厚く(笑)てとても強固なのですが
今回は思い切って表面をエイっと全部はがして再生いたしました

このような時勢ですし、タイミングがいいですよね^^

硬くて重く、古いものは壊されていく時なのですから
私にはがされてしまうのも、まぁ運命ですかね

ニスとは、中身を保護するために塗るものなんですけど
古いニスをはがして中身を一度出し、再び塗りあげると
新しく美しく生まれ変わるんですよね^^

金属も似たような原理でして、金属の皮膜が
中身を大切に保護しているんですね

美しく輝いているのは、中身なんですが
光り続けるということは、本当にすごいことなんですよね

面白いものなのですが、表面を丁寧に研いであげると
悲鳴をあげるんですね
素材も^^

様々な記憶の層のようなものが、研ぐことで
表面に現れ出てくるのですかね

あと机は、私にとっては特別で
とっても意味深い大切なツールなんですね

なぜならこの机の上から、あらゆる創造物が生まれてくるのですから

机はフィールドであり、そのひろがりの中で
意味あるものを組み立ててゆくので
どうしてもこの机に対しての思い入れが深くなってしまうのですね

私は学生さんによく、自分の部屋の一角に
小さくてもいいので、創作スペースを持つことをお勧めするのですが

ここだけは特別で神聖な場であるとイメージして使用すると
徐々になのですが、時間の経過とともに
実際思い描いた理想の場へとなっていくんですね^^

作業をとおして作品は生まれてくるのですが
この特別な場で行う作業の間に、何を思い描いて気づき、理解したのかが
一番の宝であり大切なことで、それが楽しみに繋がるのかもしれませんね

今回研ぎあげられた新しい彫金机から
様々な人たちの作品が次々と生まれてくるのだろうと
想像すると、これはもう楽しくてしかたないですよね^^

私のアトリエにある道具たちは、何かしらのストーリーがあるものばかり

時を超えて残り続けた道具たちとともに
このアトリエから新たに創作し、楽しんでいきたいと思います

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